野良猫に関する問題と対策、保護したい場合について

人気なペットと言われて真っ先に思い浮かぶ猫、愛らしさとふてぶてしさが何とも可愛い動物ですよね。しかし、現在は人気ゆえか安易に猫を飼い、そして身勝手な理由で捨てられた……そんな野良猫による様々な問題が発生しています。動物愛護の観点からむやみやたらな捕獲や駆除はできない、けれどもこのまま放置もできないですよね?

今回は野良猫による被害や野良猫対策、保護の方法など野良猫全般について解説していきます。

1野良猫達の現状と被害

野良猫は「飼い主もおらず、のらりくらり暮らしている猫」が由来となって出来た言葉です。しかし、実は彼らは野生の猫ではなく、飼い主の元から脱走した猫や捨てられた猫が繁殖行為で増えていった、つまり私達人間のせいで生まれた存在なのです。

ここでは、野良猫を取り巻く現状や被害などについて解説します。

1.1繁殖能力の高さ

繁殖能力が高いと言っても、その理由は様々ですが、猫の場合は【性成熟の早さ】【妊娠率】【繁殖期の長さ】の3点が主な理由です。順に解説していきましょう。

・性成熟の早さ

性成熟というのは繁殖行為ができる状態のこと。猫はこの性成熟がとても早く、メス猫は4ヶ月、オス猫は8ヶ月で繁殖行動をすることもあります。生まれた子猫が数ヶ月でまた子供を産み、その子供もすぐに子供が産める状態になるわけですね。

・妊娠率

人間の場合、生理周期1回あたりおよそ15%から30%の確率で妊娠できると言われています。対して、猫の妊娠率はなんとほぼ100%。オス猫のペニスについているトゲがメス猫に刺激を与えて排卵を促すため、ほぼ確実に妊娠します。

・繁殖期の長さ

猫は春と夏に繁殖期を迎えると言われていますが、これは半分正解で半分間違い。実は猫は日照時間が繁殖期をコントロールしており、日照時間が長い春から夏が繁殖期になっているのです。このため、人工照明で一日中明るい都会では1年中繁殖期ということも珍しくありません。

以上の理由から、去勢・避妊手術を受けていない野良猫は、放置しておくとどんどん数を増していってしまうのです。

1.2野良猫を放置すると起こる被害

猫に限った話ではありませんが、野生動物は感染症、交通事故、他の動物とのケンカ、生ゴミ漁りなど様々な被害の原因となります。また、対策をしないまま善意で野良猫にエサを与えた結果、生まれた子猫を狙って別の動物がやってくることもあります。

実際、今年の6月に三重県で高齢者夫婦が野良猫を不適切飼育していたことが発覚、その時は子猫目当てでアライグマがやってきていたようです。野良猫は人の目の届かない所でいつのまにか出産するため、こうした問題にも発展してしまう可能性もゼロではありません。

目に見える悪臭問題や感染症問題の他にも、生態系そのものが狂ってしまうことも考えられるため、私達が思っている以上に野良猫問題は深刻と言えるでしょう。

1.3野良猫対策はかわいそう?

現在日本では、地域猫活動や去勢・避妊手術など野良猫を増やさないために様々な対策をしています。これらの活動には批判的な声も少なくなく、前項でも語ったように野良猫を不適切飼育する人もいます。しかし、果たして野良猫を減らす活動は本当に猫にとって可愛そうな行為なのでしょうか?

野良猫を保護したというお話はよく聞きますが、そのほとんどが何らかの病気やケガをしていたという内容です。そう、野良猫はとてもつらい環境に身をおいているのです。冷たい地面に寝転がり、口に入るものは何でも食べなければ生きて行けず、感染症を患った猫同士のケンカで早死する。野良猫の世界とは、こんなにも悲惨な世界なのです。

そして、現実問題としてこの野良猫達をすべて保護して幸せにすることは不可能です。野良猫を減らす活動とは、これ以上こんな悲惨を迎えてしまう猫を一匹でも減らすための活動なのです。

2野良猫に有効的な対策

野良猫は動物愛護法によって守られているとはいえ、だからといってただ放置していると被害は増す一方です。自分たちができる範囲で対策をしていきましょう。

ここでは野良猫に対する市の対応や、手軽にできる敷地に入らせない対策について解説します。

2.1市による野良猫の対応

市役所では野良猫にフンをされた!車を傷つけられた!と野良猫に対する相談が跡を絶ちません。にも関わらず、市では野良猫に対する捕獲や駆除をしていません。それはなぜか、動物愛護管理法によって守られている愛護動物だからです。これはもちろん市だけではなく、私達住民たちもみだりに殺したり傷つける事は禁じられています。

人に危害を与える野良犬は狂犬病予防法によって、各都道府県が捕獲等の対応をしてくれますが、野良猫の場合は原則対応する義務はありません。むしろ、下手に対応してしまうと動物愛護管理法違反の恐れが発生してしまいます。その代わりとして、野良猫を増やさず、被害を減らすための活動として【地域猫活動】を行うわけですね。

地域猫活動は簡単に言えば【地域で猫を飼う】というもの。去勢・避妊手術を行い、決められた時間に餌を与え、トイレを設置する。こうする事で、ゴミ漁りなどの被害を減らしつつ、野良猫を減らしていく活動です。

2.2猫の苦手な臭いで侵入を防ぐ

自分自身が猫を飼っていない場合は猫が苦手な臭いで侵入を防ぐのがおすすめ。身近ですぐ対策できる【水】、比較的効果が見込める【専用忌避剤】や【木酢液・竹酢液】が主に使われています。ただし、忌避剤や木酢液・竹酢液は時間と共に効果が薄くなるため、野良猫が来なくなるまで繰り返し設置する必要があります。

専用忌避剤は主にペットショップや薬局、ホームセンターで売られており、手軽に入手できる反面、効果が鈍いことも。木酢液と竹酢液は園芸用肥料としてホームセンターで売られています。忌避剤として使う場合は4倍〜8倍に希釈して使用してください。また、レモンバームの葉や唐辛子を2日程度漬け込むとより効果的です。

ただし、これらは刺激臭によって猫よけをするため、近隣住民に了承を得た上で使用してください。

2.3猫を敷地に入れさせない方法

臭いで猫よけは有効的な手段であるものの、個体によっては効果が見込めなかったり、近隣住民の理解も必要です。もし臭いによる撃退が不可能な場合は建造物やその周辺に細工をして、物理的に猫が侵入できないようにしてみましょう。

進入路にネットや網を設置する、トゲ付きの枝や松ぼっくりを敷き詰める、猫が飛び越えられないくらい高い柵を設置するなどが特に有効だと言われています。一年中対策でき、かつ手軽に入手できるという点では、柵を購入するのがおすすめ。柵はホームセンターで購入できます。

また、少々高価なものにはなってしまいますが、センサー式のスプリンクラーやブザーなども侵入防止策として効果的です。

3野良猫を保護したいならすべきこと

猫が好きな方には、できるなら保護してあげたいと思っている人も多いのではないでしょうか。愛護団体に連絡することも手ではあるのですが、人手や予算の関係上どうしても限界があります。そのため、自分が自分のお金で自分だけで行うのが基本です

ここでは野良猫を保護したい時にすべきことについて解説します。

3.1まずは動物病院へ

野良猫だと思われる猫を保護した場合、感染症やノミ、ダニがついていないか等の確認のためにすぐ動物病院に向かいましょう。健康状態によってその後の対応も変わってきますし、先住猫がいる場合は集団感染を防止できます。

ただし、動物病院によっては野良猫の診察を拒否している場合があります。仮に受け入れている病院でも、院内には他の動物もいますし、何も連絡無しに行くことはおすすめできません。予め行く予定の動物病院に連絡を取り、もし受け入れ可能であればどういった手段(時間など)で来院すべきか指示を受けてください。

またその際、去勢・避妊手術に関してのお話も聞いておいた方が良いでしょう。

3.2飼い猫かどうかの確認

保護した猫が本当に野良猫かどうか、保健所やネットの迷い猫掲示板、地域のボランティア団体に連絡して確認しましょう。仮に猫がどんな状態であっても、無断で飼い猫を保護した場合は窃盗罪になります。

首輪など明らかに飼い猫の痕跡があるにも関わらず、猫の健康状態が悪いなど虐待の可能性がある場合は、動物愛護法に違反しているため、警察に連絡してください。「直接虐待しているのを見たわけじゃないから、警察に通報しずらい」という時は自治体や動物愛護センターに連絡しても大丈夫です。

また、飼い猫でなくとも地域猫である可能性もあります。地域猫の場合は、基本的にその地域のボランティア団体が管理しているため、団体に確認を取りましょう。

3.3保護した猫の飼い方

通常、ペットショップやブリーダーから購入する猫達は皆人に慣れていたり、少なくても必要以上に警戒することは滅多にありません。しかし、過酷な環境で暮らしてきた野良猫は人に懐くまで時間がかかる上、今まで外で暮らしてきたのにこれからは室内で暮らすことになるため、初めの内はストレスを抱えてしまう可能性が高いです。

保護した猫との生活はかなりの根気が必要です。しつけや食事、スキンシップなどとにかくゆっくり、ゆっくりと時間をかけて人に慣れさせていくことになります。時には大変な思いをすることもあるでしょう。しかし、一度飼うと決めたからには何があっても決して諦めず、最後まで責任を持って飼ってください。

保護した猫がその後どう暮らすかは、飼い主となった貴方にかかっています。

4野良猫を一匹でも減らすために

イリオモテヤマネコなど特殊な例外を除き、町中にいる野良猫達は決して野生の動物ではありません。かつて身勝手な理由で飼い主から捨てられた猫やその子供たちです。彼らには突如として過酷な世界に放り出され、子供を作り、大抵は3年足らずで死んでいき、そして育った子供もまた過酷な世界で暮らすことに……と、悲しい結末しか待っていません。

全ての野良猫を保護することは不可能に近く、今この瞬間にもどこかで小さい命が消えていきます。私達にできることは、そんな野良猫を少しずつでも減らしていくこと。地域猫活動や保護など、自分たちができる範囲で小さな命を救っていきましょう。

想花コラム