老犬が夜泣きするときの対処法と周囲への配慮の仕方

ある日を堺に、みんなが寝静まった深夜に響く老犬の夜泣き……。別に老犬=夜泣きというわけでもないですし、夜泣きそのものは年齢問わずしてしまうことはありますが、それでも老犬特有の理由で夜泣きすることがあるのは確かです。

なぜ夜泣きするのか、解決するにはどうしたらいいのか?なにぶん、犬も私達と同じく生きているわけですし、電源があるわけでもありません。夜泣きを解消するには、ちゃんとした方法があるのです。そして、どうしても夜泣き辞めさせれない場合は色々な方法を検討しないと、近隣の方々に迷惑がかかってしまい、そのままトラブルを引き起こしてしまうことも。

今回は老犬の夜泣きを解消させる方法や、周囲への配慮の仕方について解説していきます。

なぜ老犬は夜泣きしてしまうのか

冒頭でもお話したように、老犬だから夜泣きするものだと結論づけるのは早計です。そもそも夜泣きというのは、時間帯が夜なだけで飼い主様に要求している事自体は決しておかしな内容ではないのです。しかし、実際に老犬=夜泣きというイメージがあるのは、やはり何か特有の理由があるのでしょう。

ここでは老犬はなぜ夜泣きしてしまうのか、その理由について解説します。

老化によって感情のコントロールが難しい

老犬になった愛犬が昼夜問わずよく吠えるようになった、という話はよく耳にします。老化によってわがままになってしまっていたり、飼い主様が要求を飲んだことがある場合は要求するハードルが低くなっているためです。このようになってしまう根本的な理由としては、単純に老化によって感情の制御が難しくなっているのでしょう。

感情というものを持ち合わせている以上、私達と同じように考えればイメージしやすいです。私達も老化によって感情のコントロールが出来なくなり、怒りっぽくなったりわがままになったりします。これは何も決めつけやこじつけではなく、脳の感情面を司っている前頭葉が縮小した結果という、ちゃんとした理由があるのです。

感情のコントロールが難しい、だから無駄吠え・夜泣きする。そのこと自体は決しておかしな話ではなく、ごく自然なこと……まずはこのことを意識してください。「うちの子はそんなんじゃない!」は生物である以上、ありえないのですから。

認知症によるもの

認知症は老化現象の一つと勘違いされがちですが、本質はまったく異なります。老化による影響は主に身体能力の衰えや行動力の低下であるのに対して、認知症は脳の記憶能力が弱くなることで目的を忘れてしまったり、記憶力が衰えてしまうものです。そして、認知症のよくある症例として昼夜逆転生活というものがあり、それが夜泣きにつながるケースが多いです。

日中のうちはほとんど寝てしまい、代わりに夜に行動するようになったことで、脳の昼夜の基準が狂ってしまい、結果的に夜に要求行動である夜泣きをしてしまうのです。昼夜逆転生活は自律神経を乱し、体調を悪くさせるのも理由の一つでしょう。

認知症にはそれ以外でも、粗相を繰り返したり、無意味な行動を繰り返す、仲が良かった人にも警戒して吠えるなどの症状が見られます。もし夜泣きと同時にこれらの症状が認められる場合は認知症の可能性がありますので、一度動物病院にて診察してもらいましょう。

痛みや不安が原因で夜泣きすることも多い

老犬になると、それまでの自分とはまったく別の生物になった感覚になると思います。筋肉量が低下し関節の節々がいたくなり、五感がうまく機能しないために光や音を余計警戒するようになる。私達人間でもそういった事はありますし、なにもおかしな話ではありません。

例えば関節の痛みによるものですが、これが昼の活動中であれば多少は我慢できるのかもしれませんが、夜は睡眠を邪魔してしまっているのかも。聴力や視力が弱くなったことで、日中は感じていた飼い主様の気配が夜に感じられなくて不安になってしまっていることもあります。

初めて親と離れて寝る子供は、親が近くにいないからと泣いてしまうことがあるようですが、老犬にもそれと同じことが起きているのかもしれません。愛犬にとって、飼い主様は頼れるリーダーです。そのリーダーが近くにいないと、命を狙われることもある夜中に堂々と寝るなんてこと、中々できないでしょうね。

老犬が夜泣きする時の対処法

いざ老犬が夜泣きしてしまった時、どんなことをしたら良いのでしょうか?愛犬はただ飼い主様に現状を知ってもらいたい、助けてほしいと願って夜泣きしているのであって、飼い主様の邪魔をしたいわけではありません。正しい対処法を学び、愛犬が満足できる方法を選びましょう。

ここでは老犬が夜泣きした時に実行したい対処法について解説します。

とにかく原因を究明することが大切

老犬が夜泣きしているを見ても「もう年だから仕方ない」と諦めてしまう人が一定数いますが、決してそんなことはありません。それこそ、認知症による無意味な行動の一環として夜泣きをしてしまっている場合でも、動物病院で診察したり薬を処方してもらうことで改善することが多いです。

犬も人間も同じ生き物で感情があり、なにかを求めて声をあげます。ご飯が欲しい時は「お腹が空いた」と、なにか痛い所があれば「痛い」というように、愛犬もまたそれと同じことを夜にしているだけだと考えると、夜泣きをしてしまうことそのものはごく自然なことだと考えられますね。

さて、となれば話はそう難しいものではありません。愛犬が何を考え、何が欲しいのかを見つけ、可能であればそれを解決してあげれば夜泣きは自然と止みます。もちろん、飼い主様だけでは解決しない問題もあるかと思いますが、その場合でも動物病院や老犬ホームなど強力な助っ人はたくさんいます。自分一人で解決しようとせず、愛犬のためになにをしてあげられるかを考えましょう。

日常生活を見直してみる

昼はあまり吠えないのに、夜になるととたんに吠えだすのであれば日常生活に問題がある場合が多いです。食事の時間やトイレの時間など、個々の習慣や能力によるものが関わってくる時は年齢と状況によって調整していく必要があります。

たとえば食事、今までと同じ時間にあげているのに食べ終わる時間が違うなんてことはないですか?年齢を重ねるとご飯を噛む時間も遅くなってくるでしょうし、ご飯の量も少なくなります。そうなると深夜にお腹が空いてしまったり、なんとなくお腹がゴロゴロしてしまうかもしれません。

トイレも同じように、水分の量や運動量などでトイレの時間というのは変わってきます。前項でも解説したように、加齢によって五感が鈍くなっている愛犬が、夜にトイレに行きたいのに行けなくて泣いているかもしれません。

もちろんこれらはあくまで【かも】という可能性ではありますが、人間の言葉を話せないペットが相手である以上、心当たりを解消していくことが一番効果的です。

夜泣きはただ抑制するだけでは意味がない

犬に対してあまりこういったことを言うのは気が引けますが。夜泣きははっきりいって聞いているこちら側にもストレスになってしまいます。実際に夜泣きしている愛犬に苛ついてしまってついつい「うるさい!」と無理やり抑制してしまっている飼い主様は少なくありません。

しかし、こういうように無理に抑制させるのはかえって逆効果です。夜泣きを抑えるということは要求を抑え込むことと同義であり、犬にしてみれば「お願いしているのに怒られた」と思うことでしょう。そうなると犬にとってストレスでしかないですし、夜泣きが悪化したり問題行動に発展してしまうことも考えられます。

ではどうしたら良いのかですが。一番効果的なのは【優しく接する】ことです。愛犬の名前を呼んであげたり、なでてあげるだけでも犬は落ち着いてくれます。ある程度落ち着いたらなぜ夜泣きをしたのかを探し出し、その場で解決できるものなら解決してあげましょう。むやみに怒らず、なぜ泣いているのかを理解する、それがだれも悲しむことなく夜泣きを辞めさせる方法と言えるでしょう。

老犬が夜泣きする時に気にしたい周囲への配慮

夜泣きはなにも家の中だけで終わらせられる問題ではありません。特に住宅街など人が密集している場所であれば、周囲への配慮を怠るとトラブルになる原因になります。街の人にもそれぞれの生活がある以上、飼い主として周囲への配慮を忘れてはいけません。

ここでは老犬の夜泣きが終わらない時にしておきたい周囲への配慮について解説します。

夜泣きが招く近隣住民とのトラブル

夜泣きが原因でトラブルになってしまうことは、実は珍しくありません。事情を知らない人にとって、深夜の犬の鳴き声は【騒音】でしかなく、飼い主様は【騒音を放置している人】という認識なのです。そして、言葉を選ばずに申し上げるとその認識は決して間違いではないでしょう。

さて、なぜここまで強く話すかというと、過去に犬の夜鳴きが原因で裁判沙汰になった事例が存在するからです。細かく話すと長くなるため簡単にお話しますが、その犬は深夜や早朝に夜泣きすることが多く、近隣住民からなんどか苦情があったとのこと。しかし、飼い主は苦情があったのにも関わらず、夜泣きを止めるための対策を怠ったとして、結果として裁判で38万円(慰謝料や弁護士費用を含む)を請求されました。

このように、犬の鳴き声も度が過ぎればれっきとした騒音トラブルとして扱われます。また、この件はポジティブに考えれば【裁判をしてくれた】とも言えます。もしこれが裁判などを通さずに、不快に思った住民がそのまま当人に……なんてことになっていたら大惨事でした。それだけ、犬の夜泣きというのは近隣住民にとってストレスなのです。

トラブルを未然に防ぐには

トラブルを未然に防ぐには、【夜泣きを止めさせる方法】と一緒に【防音対策】もしていく事が大切です。住民にとって、迷惑なのはあくまで現在も聞こえる犬の声です。つまり、「自分は夜泣きを止めさせるために頑張っている」は通じません。

防音対策といっても難しく考える必要はありません。窓に遮音カーテンをしたり、犬を入れているケースに防音マットを敷き詰めるだけでも防音効果があります。お金はかかってしまいますが、飼い主としても責務である以上、多少の支出は覚悟しておいた方が良いでしょう。

また、既に苦情を入れられている場合はそこを管理している人などに相談することも大切です。マンションであれば管理人に、持ち家ならば自治体に相談するのも良いでしょう。【うちのペットが夜泣きをする】【夜泣きを止めさせるために色々やっている】ということを分かってもらえば、その人を通じて近隣住民に今の現状を知ってもらえます。

ともかく報告と対策、トラブルを防ぐためにもこの2点だけは徹底してください。

老犬の夜泣きは放置してはいけない

夜泣きそのものは咎めるべきではありません。ペットを飼っている以上、そういった事態になることは覚悟しておくべきことですし、犬も悪気があって夜泣きをしているわけではないです。夜泣きを止めさせることは大切ですが、強制させたり押さえつけたりしてはいけません。愛犬が何を求めているのか、それを理解して対処してあげましょう。

もしそれでも夜泣きが治らない場合は自分一人で抱え込まず、動物病院やデイケア、老犬ホームなどを頼ることも大切です。夜泣きは愛犬の気持ち、ちゃんと応えてあげてくださいね。

想花コラム