愛犬との楽しい夏、飼い主の皆様はどのようにお過ごしですか?プールで泳いだり、山や渓流などの自然を満喫する、ドッグランなどの屋外イベントに参加するなど、様々な予定があるかと思います。しかし、高温多湿な日本の夏は何も楽しいことだらけではありません。熱中症や夏バテ、脱水症状など警戒すべき事もまた多いのです。しっかりとした対策をしていないと、せっかくの夏が台無しになってしまうかも……。
今回は愛犬の身に降りかかる夏のトラブルとその対処方法について解説していきます。
目次
夏に警戒すべき犬のトラブル
夏は高温多湿な環境になるため、熱中症や夏バテによる被害が毎年起きています。私たちはもちろんですが、愛犬にも被害が及ぶ可能性は当然あります。またそれ以上にも、繊細な皮膚や柔らかい肉球を持つ犬はやけどの危険性も……。
ここでは夏に警戒すべき犬のトラブルについて解説します。
まずは定番の熱中症
夏に気をつけたいことと言われて真っ先に思いつくのは、やはり熱中症でしょう。軽症でも休憩が必要ですし、重症化してしまうと命を落とすこともあるほど危険な病気です。万全の対策ができる私たちですら熱中症になる事もあるのに、暑さに弱く対策も飼い主頼りになってしまう犬は特に警戒する必要があります。特に近年は最高気温が前年度の記録を上回ることも珍しくないため、より一層の対応が求められるでしょう。
室外飼いの犬は直射日光が当たらないようにするなどの対策をしなければなりませんが、だからといって室内が安全というわけでもありません。汗をかきづらく、喉の渇きを感じにくい室内では、水分補給を怠りがちになるため、気をつけないと知らず知らずのうちに熱中症になっていることもあります。
これは愛犬に対してもすべきことですが、私たちも当然意識せねばなりません。令和2年では1,500人以上の人が熱中症によって命を落としており、小さい子やお年寄りだけでなく、若く健康な人たちも危険な状態です。こまめな水分補給と休憩を欠かさないようにしましょう。
実は犬もなってしまう夏バテ
夏バテと聞くとどうしても人間が暑さでやられているイメージしかわきませんが、実は犬も夏バテになってしまいます。実は犬は、汗腺と呼ばれる汗を出す器官が人間よりも少なく、体温調節が苦手な動物で、暑さに弱いことでも知られています。そういった意味では、むしろ人間よりも夏バテしやすいと言えるでしょう。
夏バテになると、食欲が無くなったり、元気が無くなってしまい、夏を乗り切る活力が奪われている状態になります。また散歩に行くのを拒んだり、睡眠時間が平時よりも多くなったりといった体調面でも悪影響が出ることも多く、そこから熱中症や脱水症状になることもあり得ます。
夏バテ予防は熱中症予防と同様に、十分な水分補給と栄養たっぷりのご飯、室温管理を徹底するなどが大切です。愛犬も飼い主も健康的な生活を維持するためにも、しっかりと対策していきましょう。
犬も人間と同じように夏バテしてしまいます。特に犬は厚い皮膚と毛皮があることや、汗腺と呼ばれる汗を出す器官が人より少なく体温調節が苦手な、暑さに弱い生物として知られています。日中は日差しが当たらなくとも、気温次第ですぐに夏バテを起こしてしまうでしょう。
夏の散歩はやけどの危険も
やけどと聞くと、火に当たってしまったり鍋などの熱いものに触れてしまうことでやけどしてしまう光景が目に浮かびますよね。実は、日中の散歩でもやけどの危険があるのです。「外にいるのにやけど?」と思うかもしれません。実は皆様が普段何気なく歩いている地面、それこそがやけどを招く原因なのです。
私たちが住んでいる町の地面は、基本的にアスファルトで舗装されています。硬く歩きやすい一方、日の光を長時間当てられているアスファルトはとても熱くなっています。特に夏の昼間は、気温によっては表面温度が60℃にまで達することもあるほど。
人間は靴を履いているため問題ないですが、犬はそうはいきません。ぷにぷにと柔らかい肉球を地面につけて歩くため、アスファルトの熱さ次第ではやけどの恐れがあります。それに、それほど高温になっているアスファルトの近くは空気も加熱されているため、熱中症や夏バテを引き起こす原因にもなるでしょう。
夏の散歩は時間帯に十分配慮して出発しましょう。
愛犬と夏を快適に過ごすための方法
暑さに弱い犬が夏を快適に過ごすためには、飼い主様の協力が必要不可欠です。熱中症予防はもちろんのこと、食べ物が傷んでいないかの確認なども忘れないようにしましょう。
ここでは散歩の仕方や食中毒予防など、夏を過ごす際に気を付けていきたいことについて解説します。
散歩の際に意識すること
前項でも軽く触れましたが、夏のアスファルトは高熱になる事があります。特に昼間の地面は犬にとって灼熱と言っても過言ではないでしょう。老犬や幼犬はもちろん、成犬であっても長時間歩かせるのは避けた方が良いです。
たとえ雲りであっても昼間は気温が高く、また湿度も高くなるため熱中症や脱水症状の可能性もあるため、同様にやめた方が良いでしょう。しかし、かといって散歩そのものを止めるわけにはいきませんよね。
では散歩はどのようにすればいいのかということですが、日中の散歩は避けて日の当たらない夜中や明朝に出かけるようにすれば問題ありません。水分補給用のペットボトルと汗を拭くためのタオルを持ち、散歩コースを少し短めにする、朝方など日が出始める時間帯に散歩する際は休憩できる場所を確認するなど万全の対策をしたうえで出発しましょう。
食中毒への対策
夏は高温多湿な環境になるため、食べ物もすぐに傷んでしまうのが困りどころです。市販のドッグフードも未開封ならば密封されているため安全ですが、一度空気に触れてしまうと傷み始めてしまいます。一回で食べきれるタイプであれば問題ありませんが、ほとんどのドッグフードは数週間分の大容量タイプであることが多いので、ちゃんとした対策をしなければなりません。
最もメジャーなのは小分けにしてタッパーに入れて密封保存することでしょう。それ以外でも、食べ残しは早めに処分する、与える直前に匂いや見た目で傷んでいないか確認することも大切です。
普段から手作りご飯を与えている場合は、夏だけはドッグフードに切り替えた方が無難でしょう。どうしても食べさせたい場合はいつも以上に管理を徹底し、作ったらすぐに与える、残した分はその場で処分することを心がけてください。
また山や渓流に散歩しに行く場合は犬の拾い食いにも警戒しましょう。夏は秋と同様に毒草や毒キノコが多く自生しています。見た目では毒だと分からないものも多いため、詳しく知らないものには触らない、触らせないを意識してください。
室内飼いと室外飼いについて
犬は猫と違い、室内飼いをしている人もいれば外に犬小屋を設置している室外飼いをしている人もいます。夏は室内も外も熱中症や夏バテのリスクは常に伴うため、「室内だから問題ない」「外だけど犬小屋があるから大丈夫」だと油断せずに、それぞれ的確な対策をしていきましょう。
まずは室内飼いについて説明します。室内は気温や湿度によるところが大きく、また喉が渇きにくいため気が付かない間に脱水症状や熱中症になっていることがあります。エアコンによる室温・湿度管理を徹底し、空気の循環を良くするために窓を開けたりサーキュレーターを使うなどして、風通しの良い快適な環境を維持するようにしましょう。
外で飼っている場合は、兎にも角にも直射日光が当たらないようにする必要があります。木陰や建物の陰になるところに犬小屋を設置し、新鮮な水を常に飲める状態にしておき、場合によっては室内に移動させることも視野に入れてください。
愛犬の暑さ対策の仕方
夏は熱中症や夏バテなど、暑さからくる症状が多いです。言い換えれば、暑さ対策を万全にしておけば回避できることが多いということ。
ここでは夏に行いたい暑さ対策について解説します。
徹底したいエアコンによる室温管理
夏は基本的にエアコンを常時稼働させておき、常に適切な室温・湿度管理をするようにしていきましょう。暑がりな犬は室温が高いと、ものの数十分程度で熱中症や夏バテになってしまうこともあり、電気代が勿体ない等の理由でエアコンを消すと非常に危険です。
また同様の理由から、飼い主様の在宅の場合はもちろん、例え数分だとしても犬を留守番させるのであれば絶対にエアコンが稼働しているか確認してください。家に犬しかいないと、もし万が一犬が熱中症になったとしても、誰も気が付かないため重症化してしまう可能性があります。
設定室温や湿度は獣医師やメーカーによってやや意見が異なりますが、おおむね室温22℃〜27℃、湿度50%程度を維持することが推奨されています。これを目安にした上で、愛犬が暑がっていないかや、クーラー病※1になっていないかで微調整しましょう。
無視できない電気代についてですが、大体1〜2万円ほどかかるという人が多いです。エアコンを切ることはできませんので、もし節電したいのであれば、フィルターをこまめに掃除して電力消費量を減らしたり、サーキュレーターも使用して空気を循環させるなどがおすすめです。また古いエアコンは買い換えるといった手もあります、
ここで注意してほしいのが、決してエアコン内部を清掃しようとしないこと。近年になって、自分たちでエアコンを掃除しようとして関電したり火災を起こしてしまう事故が急増しています。「自分は大丈夫」だと思わずに、修理業者に頼むようにしましょう。
※1 外の気温と室内温度の差が大きいことが原因となって、自立神経が乱れ体調不良になってしまう状態
水を飲みたがらない犬への水分補給
夏のみならず、一年中水分補給はこまめにしなくてはなりません。しかし、軽い夏バテや熱中症で体調がすぐれない犬や、老犬は水分を取りたがらないこともあります。そのままだと脱水症状になってしまうため、水を飲ませる以外の手段も併用して水分補給させていきましょう。
最も効果があるのは、ウェットフードなど水分量の多いご飯を与えたり、水に味付けをしてスープのようにして飲ませること。ただの水分補給というより、ご飯を食べる時に一緒に水分補給できるようにするのです。
また、水を飲ませる際はタイミングにも注目。起きた直後や運動の後は犬も喉が渇いているため、新鮮な水ならちゃんと飲むはず。もしこれらの方法を取っても水分を取りたがらない場合はなんらかの病気や異常がある可能性があるため、動物病院で診察を受けさせた方が良いでしょう。
サマーカットの注意点
夏は犬の熱中症対策や暑さ対策のためにサマーカットをする飼い主様も多いです。確かにサマーカットには手入れのしやすさや涼しくなったりなどのメリットがあります。しかし一方で、日光や紫外線に当たりやすくなったり、ノミやマダニの被害に遭いやすくなるなどのデメリットも出てきます。
サマーカットはしない方が良いという話ではありませんが、もしする場合は獣医師やトリマーと相談の上で判断した方が良いでしょう。
愛犬を暑さから守って快適に暮らそう
ここ数年は地球温暖化の影響か、夏は最高気温を、冬は最低気温が前年度の記録を上回る事も珍しくありません。自分たちで対策ができる私達も危ないですが、それよりも危険なのがペットたちです。飼い主様がしっかりと対策をしなければ、病気やトラブルに苛まれてしまうかもしれません。
今回解説したことをしっかり意識し、熱中症や夏バテなどの危険から愛犬を守り、楽しい夏を過ごしましょう!