愛犬の死に直面した時にみせる行動と飼い主がすべきこと

生物である以上、死という概念には逆らえません。長く苦楽をともにしてきた愛犬とも、いつかお別れの時はやってきます。しかし、もし愛犬が死にそうであることが分かれば、きっと死ぬ直前まで幸せにすることはできるのではないでしょうか?近年はペットをもう一つの家族として迎える方が増えています。そうした時代の流れか、看取る場所や看取り方、死ぬ直前までのお世話の方法など、飼い主様によって様々な選択を取れるようになってきました。

愛犬にとって幸せなことはどんな生活なのか、飼い主様がご自身で最も納得のできる看取り方はどういうものなのか。ペットを心から愛することができる方々が増えてきた今だからこそ、ペットの死について考えてみましょう。

今回は犬が死ぬ直前に見せる行動や、看取る前、看取った後に飼い主様がするべきことについて解説していきます。

犬の死について

愛犬と別れる瞬間は必ずやってくるものですが、寿命や死亡理由を知っておくことで最後の瞬間を落ち着いて見届けることができるかもしれません。しかしそれでも飼い主として、大切なペットとの死別はとても辛いもので、近年ではペットロス症候群で苦しむ人が大勢います。

ここでは犬の平均寿命や主な死亡理由、ペットロス症候群について解説します。

犬の平均寿命

生物として生きている以上、寿命というのは必ず訪れるものですが、健康的な生活や医療技術による手厚い看護によって寿命をある程度伸ばすことができます。そう、実は犬の平均寿命が年々伸びているのです。2008年の犬の平均寿命はおよそ13.3歳でした。しかし2017年になるとおよそ14歳まで伸びています。この0.7歳というのは人間換算で4年から5年くらいとされています。

因みに犬の高齢期は犬種やサイズ、調べている会社によって誤差があるものの、ほとんどのデータでは小型犬及び中型犬は7歳程度から、大型犬は5歳程度から高齢期に差し掛かるとされています。自分の愛犬が高齢期に入ったかどうかは、この目安を参考にしつつ、筋肉の衰えや食欲減退など高齢期の特徴がどれだけ自分の犬に当てはまっているかで判断することになります。

犬の主な死亡理由

飼い主ならば、なるべく愛犬には天寿を全うして天国へ旅立ってもらいたいところですが、実際には犬の主な死亡理由はガンなどの病気によるものだとされています。また、現在はかなり減少してきましたが、未だに事故死や急死などお別れができないケースもそれなりに報告されています。

ただし、それでも老衰で亡くなる場合も年々増えてきており、飼い主様による食事管理や健康管理の賜物と言えるでしょう。愛犬に少しでも健康的かつ長生きな生活を送ってもらいたいのなら、運動と栄養バランスの良い食事、病気の早期発見が肝要です。

またたとえガンであったとしても、近代の医療技術により苦しみをできるだけ無くし、生活のクオリティを維持することもできるようになってきました。大切なのは日々の健康管理の徹底と、仮に病気になったとしても諦めずに愛犬のためにできることをすることです。

ペットロス症候群について

ペットを失う悲しみは当人しか理解できず、またその痛みの深さも一概に表すことはできません。ペットと離れ離れになった事実を受け入れて前向きに生きている人がいる一方で、悲しみが大きすぎるあまり日常生活に支障をきたすレベルの不調に苦しんでいる人も……。この症状はペットロス症候群と呼ばれており、専門のカウンセラーもいるぐらいメジャーな病気として認知され始めています。

ペットロス症候群はその名の通り、ペットを失うことによる喪失感や深い悲しみが引き金となって発症するもので、主な症状として倦怠感や悲しみに襲われる、食欲不振や食べすぎ、身体の不調など、心身共に支障をきたす恐ろしい疾患です。完治するまでの期間も人によってバラバラで、1ヶ月程度で完治する人もいれば、1年経っても症状に苦しめられている人もいます。

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→ペットロス症候群とはどんな病気?カウンセラーが必要って本当?

犬が死ぬ前にとる行動

愛犬の元気が無い姿を見るのは辛いことですが、死に向かっている現状にしっかりと向き合えば自ずと飼い主としてすべきことが見えてくるはずです。お別れの瞬間まで、自分ができることやしてあげたいことをやり続けてください。

ここでは犬が死ぬ前によくする行動や状態について解説します。

食欲減退

体調の悪化や元気がないなど様々な理由も重なるのですが、死ぬ前には一様に食欲の低下が見られます。特に高齢期に入った老犬だと、もともと食が細くなっていることもあって、何も食べないぐらい食欲がなくなるようです。

ただ、固形食が食べられないだけで、流動食やお水は飲めるというケースもあります。もし固形食を与えているのなら、水を加えてふやかすことで少しだけ食べられるようになるかもしれません。いよいよ死期が近づくと水すら飲まなくなったという報告も出ています。

寝たきりの生活になる

身体の自由が効かなくなったり、活力が湧いてこないなどの理由から寝たきりの生活をするようになります。ただし、高齢期に入った老犬であれば、身体の節々が痛くて動けないなどの理由から寝たきりの生活を送っているだけかもしれません。声をかけて反応したりご飯の時はしっかり起きているかなどで判断しましょう。

もし声をかけても返事しなかったり、あまりに寝たきりだと危険な状態になっている可能性があります。その場合は動物病院で診察を受けてください。

体温の異常

犬の平均体温は38〜39℃程度なのですが、死を目前にした身体はエネルギーを極度に消耗しなくなり、結果として体温が異常に低くなります。犬も手足が震えるほど寒くなっているため、毛布や湯たんぽなどを使用して首まわりや脇のした、太ももの内側など太い血管が集中している箇所を温めてあげましょう。

ただし、細菌による感染症や病気の場合は逆に体温が異常に高くなる傾向があります。その場合は逆に涼しくさせてあげてください。

下痢や嘔吐が多い

死ぬ前の犬は筋肉が緩むことで肛門が締まりきらず、下痢をしてしまうことがあります。これは病気ではなく、痛みを伴うようなものではありません。また胃のコントロールも同様に制御できないため、嘔吐もよくしがちです。焦らずにタオルなどで丁寧に拭き取りましょう。

痙攣する

死に近づくにつれて身体の感覚が鈍くなり、やがて痙攣をするようになっていきます。このような状態になったらいよいよお別れの覚悟をしましょう。また、痙攣することで周りの家具にぶつけて怪我をしないように、身の回りに物を置かないでください。

愛犬が死ぬ直前や死んだ後に飼い主がやること

犬は人間よりも寿命が短いとはいえ、それでも赤ちゃんのころから育てれば十数年生きられます。長く同じ時を共にしてきた相棒との死別は辛いかとは思いますが、だからこそ最期まで飼い主としての責任を果たさなければいけません。

ここでは愛犬が死ぬ直前や死んだ後に飼い主が行うべき選択や手続きについて解説します。

冷静な対処をするために

もしこの記事をご覧になっている方々の中に、飼い犬がもう少しで最期の時を迎えようとしている飼い主様がいるのであれば、本題に入る前に飼い主様にぜひやってもらいたいことがあります。それは【愛犬の最期とその後にすべきことをまとめたノート】を作成することです。

おそらく、今回のような犬の死についての記事をご覧になる人は飼い犬に対して深い愛情を持って接することのできる素晴らしい方々だと思います。そんな方々だからこそ、実際に目の前で愛犬が亡くなった時に冷静な対処ができなくなるかもしれません。そんな時のためにあらかじめノートを作成することで、亡くなった直後の落ち着かない状態でもひとまずやるべきことを見失わずに済みます。

大切な愛犬を失って動揺しない飼い主様はいません。まだ飼い犬が生きているのにも関わらず亡くなった後のことまで記載するのは気が重いかもしれませんが、飼い主としてすべきことをするためにも、こういった前準備が大切なのです。

安楽死という選択肢

かなりセンシティブな話題となりますが、皆様は安楽死についてどう思われますでしょうか?人間のエゴ、道徳のない行為だと批判されることもあれば、せめて安らかに眠ってほしいからと安楽死を選ぶ方もいらっしゃいます。私自身、闘病生活をずっと続けて苦しい思いを続けさせるよりは……と涙ながらに獣医師に安楽死をお願いする人の話を聞いたことがあります。

安楽死は確かに人間のエゴでしかないかもしれませんが、そこには飼い主としての優しさと覚悟が存在します。これはあくまで私見でしかないのですが、以前のように元気に走り回れることもなく、ずっと身体と心を苦しませながら生きながらえさせるのも、それともこちらの勝手ですべて終わらせるのも飼い主様としてはどちらも苦しい選択だと思います。

だからこそ、飼い主様には【安楽死】という選択肢があることだけ覚えておいて欲しいのです。安楽死は医療上の処置の一つであって、決して動物殺しではありません。どうかそのことを念頭に置いて、誰の意見でもなくご自身が考えてご決断をしてください。

犬が死んだ後にすべきこと

愛犬とのお別れのあとも、飼い主様としてすべきことはまだあります。火葬や埋葬も勿論ですが、意外と忘れてしまいがちなのが役所の手続きです。犬は狂犬病予防法の一つとして、死後30日以内に役所に【死亡届】を提出しなければいけません。また、その際に鑑札を返還します。

30日と一見猶予が長いように感じますが、辛い気持ちを整理している間にも時間はあっというまに過ぎていきます。市によってはインターネットと郵送で完結する場合もありますので、ぜひ市のホームページで確認してください。

飼い主にとって愛犬の死とは何か

ペットを飼ったことのない人の中には、「ペットが死んだくらいで……」と考えている人も少なからずいます。また同じ飼い主であっても、個人によって心の傷の深さも違ってくるでしょう。しかし、深さはどうであれ飼い主であればペットの死が悲しいものであることには違いありません。

飼い主として、そして人としてやるべき事はやらなくてはいけません。しかし、大切なのは【自分にとってペットはどういった存在だったのか】を忘れないようにすることです。月並みな言葉ではありますが、飼い主様がペットを忘れない限り、ペットは貴方の心の中で笑ってくれています。

想花コラム